その経験を生かし、開発したのがAI技術を活用したピッキングアシストロボットの「ラピュタPA−AMR」。倉庫や工場で働く人と協働し、担当者はロボットの画面に表示された指示に従って迷わず商品をピッキングできる。搬送業務も代行し、移動の最短ルートを提案する。

 結果として人の歩行数は減り、生産性は倍になった。22年度実績のピッキングアシストロボットの国内市場シェアは約7割を占め、2年連続で国内ナンバー1に。「当時は、契約が1件入り、問題なくロボットが動くだけで社内では歓声が上がっていました」

 今では社員数は約170人、国籍は20カ国以上にのぼる。社内公用語は英語だ。

「社内は多様性にあふれ、コモンセンス(常識)が通用しない。そのため、六つのコアバリュー(企業理念)を定義しています。その中で特に重要視しているのは“Empathy(思いやり)”です」

 お互いプライベートのことを聞いたり、話したりして、思いやりを持って理解し合うことを、経営者として社員に求めている。

 23年、米国にも支社を設立し、AI技術を搭載した「自動倉庫」の提供を始めた。

 事業展開をする上で、これからも大切にしたいことは「技術への愛着より、お客さんに向けた愛情ですね」と笑顔で話す。(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年1月1-8日合併号

[AERA最新号はこちら]