ところが、4、5区のいずれも本来の走りができず、区間15位、13位と連続ブレーキ。往路Vの東洋大に5分30秒差の6位という想定外の結果に、原晋監督も「ゲームオーバーという感じですかね」と表情を曇らせた。
だが、選手たちはあきらめなかった。翌日の復路では「“平成の伝説”をつくろう」という指揮官の檄に、全員が気迫の走りで応える。
「優勝するためには、自分が少しでも差を詰めるしかない」という6区・小野田勇次が57分57秒の区間新で反撃の狼煙を上げると、7区・林奎介、9区・吉田圭太も区間賞で続き、8区・飯田貴之、10区・鈴木塁人も区間2位の快走。奇跡の大逆転Vこそならなかったが、5時間23分49秒の復路新記録をつくり、東海大に3分41秒差の総合2位でゴールした。
明日につながる大きな経験値を積み、原監督も「いい負け方をした」と評したチームは、翌20年の第96回大会では、大会新の10時間45分23秒をマークし、5度目の王座に就いた。(文・久保田龍雄)
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。