ポテト代表取締役 木城高宏(きしろ・たかひろ)/1972年生まれ、埼玉県所沢市出身。私立東野高校卒業後、アパレル会社で9年間アルバイトで働く。その2年後に立川店「サンセット」オープン。現在、福生店「夕陽のTシャツ」など複数店舗を経営(撮影/伊ケ崎忍)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2023年12月25日号にはアメリカンビンテージを扱うセレクトショップ経営者の木城高宏さんが登場した。

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 横田基地(東京都福生市など)に面した国道16号。アメリカンテイストのショップが立ち並ぶ一角でひときわ目を引くのが、貴重なビンテージなどを扱うセレクトショップ「夕陽のTシャツ」だ。

 古着の品ぞろえと状態の良さには定評がある。いいものを的確に見分ける能力は、自ら何度も米国に買い付けに行くことで培った。

「アメリカンカルチャーへの愛は誰にも負けない」という自負のもと、着実に常客を増やしてきた。

 米国の雰囲気を感じられるこの街に魅了されたのは、高校生の時だった。かつて米兵たちが暮らしたアメリカンハウスにはミュージシャンや芸術家が移り住んでいた。おしゃれな古着屋や米軍の放出品を扱うミリタリーショップが軒を連ね、「とにかくかっこよかった」と振り返る。

 卒業後、一番気に入っていたアパレルショップでアルバイトを始めた。社長は厳しかったが、「つらくなるとあと3日頑張ってみようと自分に言い聞かせていました。そしたらいつの間にか仕事を覚えていたという感じです」

 半年後、いくつかある店舗の1店舗を古着屋にしようと社長に提案。古着の仕入れ方を徹底的に調べ、渡米した。現地で電話帳を頼りにリサイクルショップなどの住所を調べ、地図を片手に片っ端から回っていった。

「今思うと、英語も話せないのにすごい行動力ですよね。負けん気の強さだけでやっていた気がします」

 休みの日は都内の古着屋を回って品定めをしたり、価格の相場を調べたりした。ビンテージを扱った雑誌も穴が開くほど読み込み、知識を深めていった。努力は苦労どころか、楽しみでしかなかった。

 アルバイトの9年間を経て、東京都立川市に自身の1号店をオープン。だが、リーマン・ショックが起き、客足は激減した。同業者が次々と店をたたむなか、なんとか苦難を乗り越えた。

「あの時を持ちこたえられた経験は、従業員たちの自信につながりました。私自身は生涯プロのあきんどでいたいと思うようになりました」

 現在、来年3月までの期間限定ショップを含め、3店舗を経営する。

「部下たちが育ったら店を任せ、サーフィンをしながらバイヤーとして世界中を回るのが夢です」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2023年12月25日号

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