ドジャース入団会見に臨む大谷翔平(写真:ロイター/アフロ)

メジャー復興の幕開け

 人口全米2位の大都市にあるドジャースは、2013年から毎年メジャー1位の観客動員数を誇る米スポーツ界屈指の人気チームだ。同じくロサンゼルスを名乗りながらも、実際には郊外にあるエンゼルスとは、メディアの注目度やブランド力も比べ物にならないくらい高い。

 そこに「球界の顔」である大谷が加わったのは、野球界としても朗報だ。

 ここ最近のメジャーリーグには、野球に興味のない人々を惹きつけられるような真のスターがいないと言われてきた。その穴を埋めてファン層拡大に貢献できるのが、唯一無二の二刀流で歴史的活躍を続ける大谷だと関係者は期待する。そのためには、どうしても大谷にポストシーズンで活躍して、ワールドシリーズで優勝してもらう必要がある。というのも、全米のメディアやファンが一斉に野球に注目するのは、ほぼポストシーズンに限られるからだ。

 大谷が名門ドジャースに移籍したことで、お披露目の準備は整った。

 ドジャースが黄金期を迎えることになれば、リーグも活気づく。スポーツというのは、なんだかんだ言って、スター軍団が存在すると盛り上がる。本人が望むかは別にして、エンタメの中心地であるロサンゼルスにいると大谷とセレブたちが絡むチャンスというのも増えるため、球場外での話題にも事欠かないだろう。

 球界にとっては、「7億ドル」という数字で、まずは世間の注目を集めることに成功した。野球に興味のない人も、「あの超大型契約の野球選手」と印象には残ったはずだ。その大谷がポストシーズンに二刀流で活躍し、ドジャースを優勝に導いたとなれば、大谷は野球という枠を超えてファンを拡大し、ひいては野球自体の人気も高まるかもしれない。

「メジャーリーグの興奮を楽しんでくれるファンの数や層を世界中で拡大するのに貢献できるよう、翔平とともに尽力していくつもり」だとウォルター氏は声明で述べた。

 大谷の移籍はメジャーリーグ復興の幕開けとなるかもしれない。(在米ジャーナリスト・志村朋哉)

AERA 2023年12月25日号

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