ドジャース移籍によりプロスポーツ史上で最高額の契約金を手にした大谷翔平。大谷の選択を『ルポ 大谷翔平』の著書もある在米ジャーナリストが解説する。AERA 2023年12月25日号より。
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大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースを選んだのは、大方の予想通りだった。
しかし、驚きは契約金の金額だ。現地識者たちが予想していたおよそ5億ドルを大きく上回る10年総額7億ドル(約1千億円)。2度目のひじの手術で、投手としての未来が不透明にもかかわらずだ。たとえ今後、大きなけがをして試合に出られなくなったとしても、大谷には全額が保証されている。
単に移籍が決まっただけなら、アメリカでは野球界のビッグニュースにとどまっていただろう。それが野球界のみならずプロスポーツ史上でも最高額の契約だということで、ニューヨーク・タイムズなど普段スポーツを大きくは扱わないような有力メディアさえも速報で「記録的契約」と報じた。スポーツの枠を超えたニュースとして扱われたのだ。
「ここ数年間で、大谷は野球というスポーツの常識を書き換えた」とスポーツやポップカルチャーを扱うニュースサイト「ザ・リンガー」のベン・リンドバーグ記者は記事で綴った。
「野球の記録帳だけでなく、ルールブックさえも書き換えてしまった。そして今度は、アスリート最高額の契約を交わすことで、スポーツ界の帳簿さえも書き換えようとしている」
ドジャース選んだ理由
大谷の契約は大規模な後払いになる。年俸7千万ドル(約100億円)のうち、6800万ドルは10年の契約が終わってから支払われる。契約期間中に大谷が受け取るのは年に200万ドル(約2.9億円)だけ。残りは2034~43年に支払われる。利子もつかない。実際は、現在価値に直すと4.6億ドル(約670億円)くらいだという。それでも名目上の7億ドルという数字はインパクトが大きく、世間の注目を集めるという広報面でも良くできた契約だ。
それを含め、今回の移籍は、大谷やドジャースだけでなく、野球というスポーツにとっても最高の選択だったと言えるだろう。
「野球選手として、あとどれくらいできるかっていうのは正直誰も分からないですし、勝つことっていうのが僕にとって今一番大事なことかなと思います」と大谷は入団会見で述べた。