昨年、杉並区長選で初当選した岸本聡子区長。これからの行政のあり方、4月に投開票される統一地方選について語ってくれた。
【画像】区長選に出馬を表明した「光GENJI」の元メンバーがこちら
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昨年の杉並区長選で、私は「公共の再生」を訴えました。たとえば、子どもの貧困問題が深刻化するなかで、杉並区では子ども食堂を実施する市民団体が増えています。行政は、そういった人たちを指導・監督するのではなく、手助けをしていく。これからの時代は、住民目線に立った行政が、ますます必要だからです。
杉並区の一般会計予算2千億円の使い方を変えていくことも重要です。区の施設や人件費は「コスト」として考えられがちです。その結果どうなったのでしょうか。公的施設は民間事業者に外部委託するようになり、そこで働く職員の給料は最低賃金に近い水準になるケースも見られます。区民が契約書を閲覧しようとしても、事業者情報なので非公開部分がほとんどということもありました。これではいけません。
杉並区の職員も4割が非正規で、うち約87%が女性です。夫が終身雇用の正社員で、妻は家計を補助する役割ということが前提かのような雇用契約です。男女ともに単身世帯が増えている今の日本で、女性が安心して長く働ける環境を、区が率先してつくっていきたい。「安ければ安いほどいい」ではなく、労働条件や環境問題に配慮した新しい形の公共部門の契約を「杉並モデル」として発信していきたいと考えています。
昨年の杉並区長選は187票差での勝利でした。投票率も前回から5ポイント上昇したとはいえ37%です。区民から大きな信任を得たとは思っていません。
一方で杉並区のような基礎自治体では、政策の議論は保育、福祉、交通などの生活に密着したことがほとんど。国政政党の与野党対立とは関係なく、超党派で協力しながらアイデアを出し合い、公共の再生を実現していきたい。
統一地方選ではたくさんの候補者に立候補してほしいですね。普通に暮らしているのに、生きづらさを感じている人。そういった人たちが選挙に出て、有権者も投票する。一人ひとりの活動が線になり、やがて面となって日本中に広がっていく。地方が盛り上がって、国が思わず“ビビる”ような政治のイノベーションが起きることを期待しています。
※週刊朝日 2023年4月7日号