小児科で最も訴えが多い症状の一つに、「咳(せき)」があります。かぜやインフルエンザ、新型コロナ感染症など、ウイルス感染が猛威をふるうシーズンには、とくに身近な症状といえるでしょう。しかし子どもが感染症にかかっていないのに咳が続くなら、「ぜんそく」かもしれません。0~14歳の小児ぜんそく患者数は約53.8万人(令和2年厚生労働省患者調査)。けっしてまれな病気ではないのです。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「咳ぜんそく・ぜんそく」全3回の3回目です。
* * *
夜から明け方の咳は「ぜんそく」の可能性が
長く続く子どもの咳は心配なものです。子どもの咳のほとんどはウイルスや細菌感染によるもので、基本的に一過性です。多くは感染症が改善されれば、1カ月程度で治まっていきます。しかしそれ以上続く場合は、何かほかの病気が隠れているかもしれません。
長引く咳を引き起こす病気としては、声帯の異常が原因のもの、気管支の中に異物が入り込む「気管支内異物」、心臓の機能が悪い場合など、いろいろあります。「ぜんそく」も子どもの咳の原因として頻度の高い病気です。成人では「咳ぜんそく」の可能性もありますが、子どもでは成人ほどみられないと考えられています。
ぜんそくの咳は、▼夜間から明け方に咳が出やすい、▼アレルギー性疾患をもっている子どもでは、アレルゲンが多くなる季節になると出る・アレルゲンに近づくと出る、▼スポーツのあとに出やすい、などが特徴として挙げられます。
咳に伴って、呼気時(息を吐いたとき)にぜいぜい・ヒューヒューと音がする「喘鳴(ぜんめい)」が表れるのもぜんそくの特徴です。