背景にあるのは野党の弱さだろう。政権支持率は3割を切っているが、野党支持が増えているわけではない。一部には解散総選挙を見込んだ動きもあるが存在感がない。11月30日には前原誠司氏が国民民主党を出て新党立ち上げを表明したが、大して話題にならなかった。政権は自民党批判の受け皿がないことを見抜いている。

 今年は細川護熙政権誕生から30年の節目の年だった。55年体制崩壊のきっかけとなったのがまさに「政治とカネ」で、細川内閣は政党助成制度を導入するかわりに政治献金を制限した。今回の事件は、改革の精神がこの30年で完全に失われたことを意味している。

 長期政権は必ず腐敗する。浄化には野党の強化しかない。しかし深刻なのは私たちは一度その道を辿っていることだ。にもかかわらず同じ問題が繰り返されている。

 腐敗を防ぐ制度をいくら作っても、人々が腐敗していれば必ず抜け道は見つかる。問題の根は政治より深いのかもしれない。

AERA 2023年12月18日号

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東浩紀

東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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