床の上をすばやく走る影。うねる触角、平べったい褐色の体。発見イコール抹殺と、激しく嫌われがちなゴキブリに、熱い視線を向ける人たちがいる。「ペット」として、飼育が静かなブームにもなっているという。なにが「魅力」なのか。
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多い時で19種類のゴキブリを飼育していた――。そう話すのは、北海道大の水波誠・名誉教授だ。研究室ではほかに学生が、大きさが7センチ以上にもなる世界最大級のマダガスカルゴキブリも飼われていたという。
水波さんの研究テーマは、昆虫のコミュニケーション。夜行性のゴキブリは、性フェロモンを使って仲間を見つけ出している。脳の大きさが1ミリもないのに、景色を記憶する能力を持つゴキブリもいる。小さな昆虫が持っている、高い能力の秘密を解き明かすことが目標だ。
実験でよく使われるのが、比較的大型で扱いやすいワモンゴキブリ。しかし、水波さんたちは、フェロモンを感じ取るメカニズムが近縁種ではどう違うのか調べるため、国内外のゴキブリを集め始めた。幼いころには昆虫やクモ、キノコなどを集めることが好きで、ゴキブリにも特に苦手意識はなかったという。
ペアで8万円のGも
ゴキブリを入手する方法の一つが、ペットショップだ。
東京・板橋にある「フィッシュジャパン」は、主な商品は熱帯魚だが、爬虫類や昆虫なども販売している。そして国内外のゴキブリも扱っている。
「人気なのは、ニジイロゴキブリ、ルリゴキブリといった、姿がきれいなものですね」
と担当者は説明する。
ニジイロゴキブリはベトナムに分布する種で、深緑色の金属光沢がある。1匹2000円ほどだ。ルリゴキブリは日本で最も美しいゴキブリと言われており、オスは見る角度によって青色に輝く。「1匹1000円を切る価格なので、よく売れます」と担当者。