母猫が出産し、子育てをする「産室」。メスは約270匹いて、月50~60匹の子猫が生まれるという。「産室の母猫は定期的に広い部屋に放し、運動させています」と大久保浩之社長は説明する(撮影/太田匡彦)

 2023年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で下半期に読まれた記事を振り返る。社会編の9位は「ペットショップチェーンCoo&RIKU社長『ペットショップはなくなったらいい』 訴訟中の業界最大手が模索する“道”とは」(11月26日配信)だった。(肩書年齢等は配信時のまま)

【写真】自社繁殖場の様子。「ゴキブリはもちろんいる」がわんさかでは「決してない」と社長

 ペットショップチェーン最大手「Coo&RIKU」が、SNSに「クーリクは非常に悪質なペットショップで有名です」などと投稿した東京都内の女性(43)に対し、名誉が傷つけられたとして損害賠償を求める訴訟を起こしている。だが、法廷における陳述などには、同社のビジネスのあり方に疑義を抱かせるような内容もあった。一部週刊誌やネットニュースで、同社の飼育環境などを問題視する報道も出始めている。Coo&RIKUのビジネスの実態を、大久保浩之社長に取材した。

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 Coo&RIKUの繁殖場から出荷される子犬・子猫を巡っては、3万円程度を支払うことで、店舗に来る前から「予約」できる制度があるとの報道も出ている。事実であれば、生後56日を超えるまで子犬・子猫を販売したり、販売のために展示したりするのを禁じる動物愛護法に抵触している可能性もある。どういう制度なのか。【以下、( )内は筆者による補足や注釈】

「内金ではなく予約金」 契約成立ではない

大久保 うちのサイトには「出産情報」を載せていて、(子犬・子の)目が開く前から全頭の情報を、成長過程などを含めて見られる状態にしている。(それらの子犬・子猫について消費者の)購入の意向が決まっていれば、先に予約金を取り、一方で予約割引をする。(予約した子犬・子猫を消費者の)近くの店舗に送り、引き渡す。僕の認識では、売買が確定するのは内金をもらい、売買契約書を交わしたとき。その両方ともやっていません。ブリーダーさんが生まれた日に(子犬・子猫の写真などを)ブログにアップするのと、商流は一緒です。

 内金をもらうと、恐らくそう(動物愛護法に抵触する)ですね。ただ内金ではなく予約金。内金であればキャンセルした場合は返金できない。お客さんは、予約金であれば、キャンセルや変更を自由にできる権利を持っている。それが契約成立に至っていないということです。

 今夏以降、「週刊新潮」とそのデジタル媒体「デイリー新潮」がCoo&RIKUの「劣悪飼育」問題などを積極的に追及している。報道の影響は出ているのか。コロナ禍による外出自粛などの影響でここ数年、ペット販売は好調だった。今年に入って業界全体でその反動が出てきており、苦戦が続いているという側面もある。

大久保 一定程度のダメージは受けています。(コロナ禍で起きたペットブームの反動減の)要素は10%くらい。それよりも下がっているので、新潮さんはすごいです。ツイッター(現X)も(影響が大きい)ですね。

猫の繁殖場は千葉県東金市内の国道沿いにあった。もともとスポーツ用品店だった建物で、国道側はCoo&RIKUの店舗になっている。建物裏側のスペースが繁殖場で、ここに繁殖用の猫が約300匹いるという。(撮影/太田匡彦)
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消費者が知らなくていいところもある