「普段の練習から客席に人がいるのをイメージして、アピールする滑りを意識してきました。本番はお客さんがいることが楽しくて、曲を感じながらステップを踏みました」
今季世界最高点の105.51点をマーク。得点を見た瞬間に、大きく口を開けて驚いた。
「100点は視野に入れていましたが、最高点なんて考えてませんでした」
最終滑走の宇野は、鍵山からの刺激で気持ちを高めた。
「優真君の演技を画面で見て、やっぱりジャンプだけでなく全部がうまいな、と。僕が完璧にやらないと超えられない点数だったので、優真君が戻ってきてくれて嬉しいなと思いました」
宇野は、落ち着いた表情で4回転フリップを成功。4回転トウループ+3回転トウループは詰まり気味になったものの、トリプルアクセルは流れのある着氷を決めた。ステップシークエンスでは、ゆったりとした音楽に溶け込み観客を魅了した。
「今できる申し分ない演技ができました。(コーチの)ステファン(・ランビエル)からも熱意ある『良かった』という言葉をいただけて嬉しかったです」
得点は100.20点。4回転トウループは「90度不足」、3回転トウループは「90度以上、180度未満の不足」の判定で減点があり、鍵山に及ばなかった。
判定が厳しいという印象はあったものの、この日は宇野も「詰まり気味だったので仕方ない」と平常心を保っていた。(ライター・野口美恵)
※AERA 2023年12月11日号より抜粋