小3で感じた「貧困」と「社会格差」
とはいえ、小学2年生までは、自分の家を貧困家庭とは思っていませんでした。そのくらい、ボーッとした男の子だったのです。
よその家庭とわが家とを比べて「うちは貧乏なんだ」と初めて気づいたのは、小学3年生のときです。夏休みの自由研究に選んだのは「わが家の電気・水道節約調べ」。
都営団地に住むには所得制限があります。つまり、世帯収入で見れば似たり寄ったりのはずです。それでも、この夏休みの宿題をしながら、子ども心に格差を感じました。「あれ? うちってお金ない家なんじゃないか?」って。
小学3年生で芽生えた社会的な格差への意識は、その後さまざまなところへ向くようになりました。団地の外に行けば、1台で数百万円するような高級外車がたくさん走っています。でも都営団地へ目をやれば、わが家をはじめとして、お金のない家がたくさんあります。
「外にはいくらでもお金を持ってる人がいる。それと同時に、わが家みたいにお金のない家がある。この差は何だろう」という疑問が生じてきたのもこの時期でした。そこから「このまま、ボーッとしてちゃいけないんだな」と感じ始め、自分から勉強をするようになったのです。
小学校高学年の頃にはかなりよい成績を取れるようになっていました。ただ、学習環境は決して整っているとはいえませんでした。
母が内職で使うミシンと勉強机とは背中合わせで、椅子は1つだけ。つまりミシンを使うときには勉強机は裁縫用具の置き場になり、椅子もないので母の仕事中は自分の机で勉強できません。こんな狭い家で何かと不自由はありましたが、そんなときには食卓でノートを広げればいいし、勉強するのに苦労を感じたことはほとんどありませんでした。塾に行く必要性を感じることもありませんでした。