日本版「Udemy」のサイト画面
日本版「Udemy」のサイト画面
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 社内研修などで、「eラーニング」を経験したことがある人も多いだろう。1990年代から導入され始めた「パソコンを使ったトレーニング」がeラーニングだ。当初はCD-ROMに収められた教材を使うというレベルのものがほとんどだった。それでも、「大量のテキストを持たなくてもいい」「動画や音声での解説」「講義を聴くことができる」というのは便利なのだが、大々的に普及したかというと、そういうわけでもない。

 2000年代に入ってからは、インターネット上で講義を受ける「eラーニング」が主流になったが、いまだに通信教育と言えば、テキストやメディアに収められた教材を購入するというケースが多い。そんななか、今年4月30日にベネッセコーポレーションが、アメリカのeラーニング大手Udemyと業務提携し、日本版「Udemy」のサービスを開始した。

 Udemy社は、アメリカで2010年にサービスを開始したeラーニングのネットベンチャーだ。すでに世界190カ国、700万人以上の受講者がいるという。その最大の特徴は、「C to C(Consumer to Consumer)」のビジネスモデルということだ。誰でも講師になれ、誰でも受講することができる。従来のeラーニングでは、いわゆる「先生」が講義し、それをネット配信で受講するという「B to C(Business to Consumer)」モデルがほとんど。日本でも「gacco」「schoo」「N-Academy」などが、その形で先行している。

 ところが、「Udemy」では、誰でも講師になることができる。YouTubeのように自分で講義の動画を作成し、「Udemy」にアップすればいい。もちろん、内容など厳しい審査はあるが、基本的には誰でも講師になれるのだ。

 日本版「Udemy」を運営するベネッセコーポレーションEdTechビジネス開発部の山口貴弘氏に話を聞いた。

「アメリカでは、すでに半年で1億円を稼ぐ数学の先生がいます。FXなどの専門性が高い分野でも、短期間で稼いでいる人もいる。受講料も基本的に講師が自分で決めます。この自由度の高さが、eラーニングの弱点を埋めたと言えると思います」

 ここで言う“弱点”とは、マネタイズの難しさだという。何かを学びたい場合、テキストを買う、教材を購入することに大きな抵抗はない。また、スクールに通う際に受講料を払うことにも同様だ。しかし、自宅などで学び、テキストがなく、ネット配信なのでメディアも手元に残らないeラーニングで、「お金を払う」ということに抵抗を感じる人が少なくないというのだ。心情的に、「形が残らないもの」にお金を払いにくいのだろう。

 ところが「Udemy」では、講師自身が受講料を決めているので、価格はさまざま。お仕着せの価格ではなく、自分が納得できる価格の講義を受講すればいい。また、スマホの普及もあり、デジタルコンテンツにお金を払うケースが日常的に増え、無形の物にお金を払う意識が醸成されてきている社会環境も後押ししていると言える。

 「Udemy」は、基本的に講義動画をアップロードできる「動画プラットフォーム」だと考えればいい。YouTubeに上がっているHow to動画に近いが、それよりも内容や動画の品質が保証され、学ぶことに特化した設計となっているところが大きな相違点だ。YouTubeは一般のユーザーが大量に画像を投稿することで盛んとなり、「YouTuber」という新たな稼ぐ人を生み出した。同じように「Udemy」でも、新しい先生が誕生する可能性が高い。

 ちなみに、6月23日からはサッカー元日本代表監督・岡田武史氏の講義を期間限定で販売している。こういった宣伝効果が見込めるコンテンツも配信しつつ、今はまったく無名だが特定の分野では誰にも負けないという自負を持つ人が、新時代の先生としてデビューしてくるようになれば、eラーニングはこれまでの状態から脱して活況を呈するかもしれない。

(ライター・里田実彦)

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