11月23日に公開された映画「翔んで埼玉」の続編「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」。関東を飛び出し、関西にディスが飛び火した第2章だ。主演のGACKT、二階堂ふみ、本作から参加の杏が語り合った。AERA 2023年12月4日号より。
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──華やかなキャストが参加するロケ撮影が多く行われ、「過酷な撮影だった」とGACKTは話す。
GACKT:スケジュールがタイトでロケが多かったので、本当に過酷な撮影でした。ただ、僕らが過酷ということは、スタッフはもっと過酷。前作でも思ったのですが、過酷な状況下で非常にふざけたことをみんなが真面目にやっている。それは映画愛がないとできないことです。
杏:エキストラの方々の全衣装にメッセージが書き込まれていたり、通天閣のセットでの撮影に本物のたこ焼き屋さんの方が参加していたり、ひとつひとつの作り込みが本当にすごかった。私も自分の衣装に対して、「かつて戦った武将たちの家紋を入れることで、その思い出を大切にしていることが伝わるのではないでしょうか」という提案をして、採用していただきました。小道具や衣装ひとつ取ってもみんなの思いが込められています。
緊張感とせめぎ合い
GACKT:前作のスタッフがほぼ続投しているので、スタッフ間の仲が良いんです。みんなが良いものを作ることに真剣に向き合っているからこそ、たまに部署ごとの張り合いが起こるのがワクワクする。誰よりもぶっ飛んでいるのは武内(英樹)監督です。綱引きのシーンを撮る時の天候が、監督がイメージしていたものとは違ったんです。そこで「もう一回撮る」とおっしゃったんですが、予算的には難しいので、予算を管理している方が激怒していました。綱引きのシーンのためにそういったぶつかり合いが起こっているのを見て、例えば黒澤明監督作品のような、古き良き日本映画界の雰囲気がまだこの現場には残っているんだなと興奮しました。この作品でしか味わえない緊張感とせめぎ合いが毎回あるのがとても楽しいです。
二階堂:GACKTさんは今美しく話してくれましたが、「やりすぎじゃない?」と思うこともたくさんあります(笑)。でも、前作の時からGACKTさんと話していたのが、「差別や争いや分断はすごくバカバカしいことである」というのが、この作品の大義名分。だからこそ、全スタッフと全キャストが妥協せずに作品作りに臨んでいる。規模は大きくなりましたが、本質的には何も変わってなくて、前作が結果を出したことで、さらに迷いなく突き進んだ作品だと思います。また、土地の文化や風土を身近に感じられる作品だと改めて感じました。