ステージ終了後。スカパラのトランペット奏者のNARGOさんに、本番を終えた感想を問うと、楽しそうにこう話した。
「僕らがやっている音楽と郷土芸能があそこまでぴったり合って親和性があったのかと、本番まではわからなかった。僕らはいつも通りのことをやっただけ。だけど、観客のみなさんが本当に心を開いてくださった。最高でした」
高橋さんも、
「本当に楽しかった」
と言い、いつもの自分のライブとは明らかに違い、ステージ上で“化学反応”が起きたと話す。その結果、あそこまで盛り上がったのではないかと。
「それは秋田を代表する郷土芸能の人たちが、ムードを作ってくれたんだと思うんです。(今回のフェスは)秋田の人たちによる郷土芸能のライブなんだ、っていう感じがしましたね」
■素敵な観光資源として
人口減や高齢化で伝統芸能の担い手が少なくなる中、その継承は大きな課題だ。今回、立教大学の学生たちが伝統芸能に関心を持っていることに、スカパラのバリトンサックス奏者の谷中敦さんは、こう話す。
「事前練習の時から、アヒル会の皆さんが本当に楽しそうにやられているのを見てきた。若い子たちも伝統芸能に触れるきっかけさえあれば、夢中になれる可能性がある気がした。若い子たちがどんどん(伝統芸能に)参加できるきっかけをつくってあげたら、そこから広がっていく可能性はあるんじゃないかなって、感じましたね」
秋田の人たちが大切に守り伝えてきた伝統芸能を体験した学生たちも、フェスを通じ様々な思いを抱いた。なまはげ太鼓に挑戦した入江さんは言う。
「プロの和太鼓奏者の方から、技術だけじゃなく情熱も一緒に教えていただき、私たちも受け取りました。この気持ちを忘れずに、今度は私たちが人と人とのつながりを生み出していけるよう、取り組んでいきたいと思います」
盆踊りを踊った中山さんは、観光学部に所属し、将来は観光業界で働きたいと考えている。そんな彼女はこう話した。
「伝統文化は、すごくいい観光資源だと思いました。秋田以外にも、きっと日本には素敵な伝統文化はあると思いますし、それを発信することは観光につながっていくと実感しました」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年4月3日号より抜粋