土井敏邦(どい・としくに、左):1985年から三十数年間、パレスチナ・イスラエルを現地取材。主な映像作品に「ガザに生きる」(5部作)、「沈黙を破る」「愛国の告白」。著書に『「和平合意」とパレスチナ』『アメリカのユダヤ人』など/錦田愛子(にしきだ・あいこ):慶應大学法学部教授。専門はパレスチナ・イスラエルを中心とした中東地域研究、移民・難民研究。共著に『教養としての中東政治』、編著に『政治主体としての移民/難民』などがある(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

 現実的なところでは戦後のたとえば半年など一定期間、イスラエルがガザ北部を軍事占領する。駐留することでハマスが再び拠点を築くことが絶対にできないようコントロールする。そうすればイスラエル世論も納得すると思います。

 その後は、できれば国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)や国連レバノン暫定軍(UNIFIL)のような国連の組織に入ってもらい、中長期的にコントロールしてもらうことを、イスラエルとしては考えているのではないでしょうか。

土井:先ほど錦田さんはハニヤの話をされましたが、ガザでのハマスの基盤が完全に破壊されたら、カタールでハニヤが生きていようがいまいが、「ハマス」という組織はガザでは生き残れないと思います。

 ただ問題は、ハマスを殲滅しても「残るもの」があるということ。ガザ住民の“怒り”です。

 1948年のイスラエル建国以来70年続くイスラエルの占領に対する怒り。今回、これだけ残虐な仕打ちを受けたことに「いつか一矢報いずにおくものか」という気持ち。その怒りまでは、決して消せない。それは新たな武装闘争組織を生み出す。

錦田:おっしゃる通りだと思います。ガザの人たちはいまは生き残ることに必死ですが、一段落した後、その怒りを受けてハマスと同じような組織が出てくることはあり得ると思います。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2023年11月20日号より抜粋

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