ローリング・ストーンズの18年ぶりの新作、40年以上経って完成した”最後のビートルズ・ソング”の発売など、ロックのレジェンドたちが話題を提供している。ロックの名盤を、音楽評論家で朝日新聞編集委員(天草)の近藤康太郎がガイドする。AERA 2023年11月13日号より。
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ロックは、黒人だ!
エルビス・プレスリーがロックンロールのキングだとされている。事実、そうなのだが、ちょっと待ってくれ。ロックンロールのキングがエルビスなら、王に戴冠させた、ロックの創造神は黒人だ。
チャック・ベリー『アフター・スクール・セッション』(57年)を聴く。ギターリフのかっこよさ、踊り出さずにいられないビート感、反抗的にふてえ歌詞、ぶっ飛んだステージアクション。エルビス以後のロックな要素は、早くもここにある。
ファッツ・ドミノやリトル・リチャードにボ・ディドリー、マディ・ウォーターズら、ロックの先人を知る。若者たちを熱狂させるかっこいい音、いけてるファッションとは、20世紀は黒人カルチャー発だった。
ロックは、ギターだ!
いちばん簡単なロックの定義は「ギターがジャカスカ鳴ってじゃかましい音楽」。ロックが生まれて、ギターが初めて楽器の王者になった。若者の気を狂わせる音=エレキギター。
第一人者がジミ・ヘンドリックスだ。『アー・ユー・エクスペリエンスト?』(67年)では、ギターのかっこよさが爆音で炸裂する。弾き方も、アンプから出入りするフィードバックのノイズも、エフェクターもステージアクションも、すべてがぶっ飛んでいた。世界を変えた超人ジミ・ヘン。
エリック・クラプトンや、今年亡くなったジェフ・ベック、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)にポール・コゾフ(フリー)ら、ロックにギターカリスマは多い。「最も偉大なギタリスト10人」は、ロックファンの間では禁じ手のテーマである。殴り合いになる。
「ジャカスカ鳴ってじゃかましい」というギター価値観でいけば、後年のパンクロックのスティーブ・ジョーンズ(セックス・ピストルズ)、さらに後年、グランジロックのカート・コバーン(ニルヴァーナ)をはずしてはいけないと思うが、禁じ手なのでここには書かない。