ロックは、女性だ!
文学でもアートでも科学でも政治でも、あらゆる表現分野で、女性の活躍は男社会に抑えられてきた。制度的に、女性の表現者が出ないようにされてきた。唯一の幸せな例外が、ロックだったんじゃないか。
再評価の声が高いジョニ・ミッチェルの『ブルー』(71年)。高音で透明感あるボーカルに、なんといってもギターテクニックのすごみ。収録の「ケアリー」や「カリフォルニア」などすべてが名曲。「ア・ケイス・オブ・ユー」を、最近ではダブ・ステップのアーティストがカバーしているのを聴いた。時代や流行と関係ない。エバーグリーン。永遠に輝く資格がある。
ロック草創期から、女性ミュージシャンがロック史の一半をになってきた。キャロル・キングは自分で歌う前から、作曲家としてロックの歴史に名を刻んでいる。ジャニス・ジョプリンの、力強くも痛々しいシャウトは、テキサスの保守的な田舎町に生まれ育った女性にしか出し得ないもの。
爆弾娘ティナ・ターナーは黒人女性にしてロックの女王の称号を得る。ロックやソウルやジャズやのジャンルを超えたアレサ・フランクリンを、聴かずに死んでいいわけない。(朝日新聞編集委員(天草)・近藤康太郎)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋