衆院予算委で、質問に応じて挙手する岸田首相=10月27日
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「何をやりたいのかわからない」。岸田政権に、身内の自民党内からさえ、そんな声がもれる。内閣支持率も急落し、政権の崩壊の可能性も高まってきた。AERA 2023年11月13日号より。

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 岸田文雄政権の迷走が止まらない。内閣改造で女性閣僚を5人起用して「女性重視」をアピールしたと思ったら、副大臣・政務官人事では女性がゼロ(その後、文部科学政務官の交代で女性を起用)。防衛費の大幅増額などで増税が控えている中、税収増の「還元」で所得減税を実施するという。物価高で将来不安が募る国民の間では政権不信が高まる。岸田首相には、自民党内からさえ「何をやりたいのかわからない」という疑問が出ている。支持率低下が続く中で、強引に衆院の解散・総選挙に突入して敗退するのか、それとも政策が行き詰まって立ち枯れるのか。このままだと、政権の崩壊は時間の問題となってきた。

 日経新聞が10月27~29日に実施した世論調査結果が政府・自民党に衝撃を与えた。内閣支持率が9月に比べて9ポイント下落して33%、不支持率は8ポイント増えて59%になったのだ。岸田首相が政権浮揚策として打ち出した「所得減税」については「適切だと思わない」が65%に上った。減税を表明した直後の支持率急落という事態に直面し、政権は最大のピンチに追い込まれている。

失われた信頼感

 岸田内閣の不支持率は増え続けているが、その内訳を見ると、「岸田首相が信頼できない」をあげる人が多くなっている。とりわけ、6月の通常国会会期末に衆院の解散・総選挙が取りざたされ、結局は見送られたころから、「信頼できない」という反応が目立つようになった。

 国会質疑や記者会見で解散・総選挙について問われた岸田首相が一瞬、にやけた表情を見せて「今は考えていない」とけむに巻く場面が続いた。多くの国民は、岸田氏について「まじめ」「誠実」といった印象を抱いていた。前々任の安倍晋三氏、前任の菅義偉氏と比べて、岸田氏は「ひ弱だが、強権とは縁遠い」とみられていた。ところが、現実の岸田氏は「解散権を弄んでいる」「実は権力志向」といった見方が強まってきた。岸田氏への信頼感が失われている中で、様々な施策を繰り出しても支持率は回復しないのは当然だ。

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