
カレーそのものの風味や味わいが楽しめるように、具材は牛肉と玉ねぎのみ。2代目店主の娘で20歳のころから店に立つ吉田純子さんによれば、上にのる生卵には、「滋養のある卵でお客さまに栄養をつけてほしい」という吉田さんの祖父の思いが込められているという。
海外メディアにも取り上げられるなど、よく知られた店だが、支店は大阪・天保山のみ。どんなに望まれても、本店の目の届かない場所には出店しない。それは、
「創業当時の味を守るため、という父の意向です」
と吉田さんは話す。
10年ほど前には、トンカツやサーロインステーキに「ミニ名物カレー」が付いたセットが登場。来店客が、名物カレーはマストで食べたいが他のメニューも気になる……と迷うのを見て、このセットをメニューに盛り込んだという。
おいしいだけではない、満足度の高い料理を提供したい。その想いは名物カレーの誕生からいまに至るまで、しっかりと受け継がれている。
(ライター・丹下紋香、森岡美香)
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※AERA 2023年11月6日号