煉瓦亭/煉瓦亭の「元祖ポークカツレツ」2800円。揚げ物に千切りキャベツを添えるスタイルも煉瓦亭が元祖と言われている(撮影/柏木ゆり)
煉瓦亭/煉瓦亭の「元祖ポークカツレツ」2800円。揚げ物に千切りキャベツを添えるスタイルも煉瓦亭が元祖と言われている(撮影/柏木ゆり)

 カレーそのものの風味や味わいが楽しめるように、具材は牛肉と玉ねぎのみ。2代目店主の娘で20歳のころから店に立つ吉田純子さんによれば、上にのる生卵には、「滋養のある卵でお客さまに栄養をつけてほしい」という吉田さんの祖父の思いが込められているという。

 海外メディアにも取り上げられるなど、よく知られた店だが、支店は大阪・天保山のみ。どんなに望まれても、本店の目の届かない場所には出店しない。それは、

「創業当時の味を守るため、という父の意向です」

 と吉田さんは話す。

 10年ほど前には、トンカツやサーロインステーキに「ミニ名物カレー」が付いたセットが登場。来店客が、名物カレーはマストで食べたいが他のメニューも気になる……と迷うのを見て、このセットをメニューに盛り込んだという。

 おいしいだけではない、満足度の高い料理を提供したい。その想いは名物カレーの誕生からいまに至るまで、しっかりと受け継がれている。

(ライター・丹下紋香、森岡美香)

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