
ブームを超越「100年続く」東西の洋食店AERA 2023年11月6日号より。
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もはや一時のブームを超えて、一つのジャンルとして定着した「レトロ」。洋食の分野では、100年以上愛され続ける洋食店がある。
東京・銀座の一等地に店舗を構えながら、肩ひじを張らず気軽に洋食が楽しめる名店が「煉瓦亭」だ。日本の洋食店第1号として、1895年から変わらず営業し続けている。
創業当初はフランス料理店だったが、99年から洋食の代名詞となる料理を数多く提供。時代とともにメニューも増加し、日本ならではの洋食を確立していった。
愛され続ける理由
現在の看板メニューのひとつであるポークカツレツは、創業時に提供していた仔牛肉のカツレツ「ビールコートレット」をヒントに作られたメニューだ。フライ料理には、当時幅広く日本人に食されていた天ぷらの技法を応用し、深鍋と油切れのよい生パン粉を使用。現在もその作り方を受け継いでいる。
煉瓦亭の4代目店主、木田浩一朗さんは、
「既存の調理方法にとらわれることなく、日本の人が食べやすい味付けの洋食メニューを開発することでより多くのお客さまに親しんでもらえるようになりました」
と教えてくれた。
ポークカツレツだけでなく、カキフライ、オムライス、ハヤシライスといった洋食もすべて煉瓦亭発祥とされ、まさに日本洋食の元祖。「明治誕生オムライス」(2700円)は、とろとろの卵に包まれた和風の味付けのごはんがどこか懐かしい味わいだ。
愛され続ける理由を、木田さんはこう話した。
「時代に合わせてメニューも少しずつ変化していますが、店内の雰囲気は変わらないので昔を懐かしんでくださる常連さんも多いですね」
想いは受け継がれる
煉瓦亭オープンから遅れること15年。1910年には大阪に、初の西洋料理店「自由軒難波本店」が誕生している。名物は「混ぜカレー」だ。
創業当時、ごはんを保温できる設備がなく、熱々のカレーを提供することが難しかった。そこで創業者が、ごはんとカレーを混ぜ合わせた、現在の「名物カレー」を考案し、たちまち人気メニューとなった。