投手で注目が集まっているのが高山と同じく阪神を自由契約になった小林慶祐だ。2016年のドラフト5位で日本生命からオリックスに入団。1年目には即戦力の期待に応えて一軍で35試合に登板して2勝をマークしている。2020年のシーズン途中に交換トレードで阪神に移籍。翌2021年には22試合に登板して4ホールド、防御率2.25とまずまずの成績を残したが、徐々に登板機会が減少し今年は一軍でわずか1試合の登板に終わった。ただ二軍では39試合に登板して16セーブをマークし、ウエスタン・リーグの最多セーブにも輝いている。投手陣が充実している阪神ではどうしても埋もれてしまった印象が強いが、リリーフが苦しい球団は多いだけに、水面下で調査が行われている可能性は高い。

 一軍での実績はほとんどないものの、密かに注目を集めているのが中川颯(オリックス)だ。立教大では1年春から投手陣の一角に定着すると、その年の全日本大学野球選手権ではリリーフとしてフル回転の活躍を見せてチームの59年ぶりの優勝に大きく貢献。最優秀投手のタイトルも受賞した。2020年のドラフト4位でオリックスに入団。1年目から二軍では結果を残していたものの、昨年は大きく成績を落としてオフには自由契約となり、今シーズンは育成選手としてプレーしていた。

 プロ入り3年目で早くも2度目の戦力外ということでオリックスに残るという選択肢はなさそうだが、今シーズンの二軍の成績を見ると勝ち星こそないものの21試合、32回2/3を投げて34奪三振、防御率1.38と中継ぎとしては十分すぎるほどの数字を残している。なかなかいないタイプの本物のアンダースローであり、高校時代は4番、ショートとしても出場していただけあって能力の高さは申し分ない。投手陣にアクセントを加える存在として面白いと考えている球団もあるはずだ。

 自由契約となった選手の顔ぶれを見ると在籍年数が短いケースも多く、それだけ選手の見切りが早くなっている傾向も感じられる。ただ藤井皓哉(ソフトバンク)のように独立リーグを経て大きく成長するケースもあるだけに、ここから1人でも多くの選手が這い上がってくることを期待したい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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