小林:今回追加したうちのひとつが馬毛島の写真です。私は一時期、かつては人が住んでいた無人島に興味があり、馬毛島もそのひとつでした。司馬さんの「種子島みち」では、冒頭の部分に出てきます。西郷隆盛の側近、桐野利秋が西南戦争の数カ月前、この島で薩摩の武士たちを集めて盛大な鹿狩りをしたとある。その後この島は数奇な運命をたどり、民間の企業がここを買い取って、日本版のスペースシャトルの基地にするなどの構想がありました。最近は、自衛隊の米空母艦載機用の陸上離着陸訓練場になるということでニュースになっている。ちょうどその時「種子島みち」を取材することになり、上空から馬毛島を撮影することができました。
『街道をゆく』はなるべく現代とリンクさせて紹介したいなという思いがあります。「種子島みち」の司馬さんの取材は約48年前で、その時代を“複写”しようとしても必ず失敗する。あくまでも現代の視点でそれをとらえ、司馬さんの世界に誘ってゆく作業が必要だと思っています。司馬さんは『この国のかたち』に、「私は、かりそめのことながら、別の惑星からきたとして、日本国を旅している」と書きました。このスタンス、いいですね。踏襲できたらとおもっています。
(構成/編集部・村井重俊)
※AERA 2023年10月16日号