「リスクは十分に検討したのか」検討させて意欲をくじく

 まず、「リスクは十分に検討したのか」について考えてみよう。

 新しい試みは、それが何であったとしてもリスクと不確実性の塊である。最近であれば新店を出した途端に新型コロナに見舞われ、大きな損害を被った会社はいくらでもある。地政学的な変化から、あてにしていた原材料が確保できなくなってしまったような会社も同様にある。よって、ビジネスを遂行する上で、しっかりリスクを検討することは重要だし、特に新しい挑戦をする際には、リスクの想定は絶対に必要である。

 リスクを検討するフレームワークの一つとしてPEST分析がある。Politics(政治・法)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)があり、自分たちが事業を推進する場合に、どのようなリスク――たとえば関連する法律が変わる可能性、新技術の登場の可能性、それらの影響――があるかを事前に考えることは必須である。

 そこで如才なき管理職はこれを利用する。

 一度やってみればわかるが、あらゆる事業活動には、多種多様なリスクがある。それらをすべて挙げて、その発現可能性と影響度の大きさを考えると、何事であってもそう簡単に成功することはできないことが明確になる。そしてリスクを洗い出すことにより、ネガティブな状況が想起され続けると、よほどモチベーションの高い担当者でなければやる気がなくなってしまう。そうするうちに自動的に新しい試みは取り下げられる。何もやらなくても良い大義名分になる。

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