ネット証券のコスト引き下げ競争は喜ばしいが、証券会社の経営状態が気になる。主要ネット証券で唯一、増益を確保した楽天証券の楠雄治社長に本音を聞いた。
【答えた】楽天証券クレカ積立1%改悪の可能性について楠社長の返答はこちら!
楽天証券は8月2日発表の2023年12月期上半期の決算説明会資料の中で、総合口座数が924万口座(2023年6月末現在)と発表した。
SBI証券は1046万口座(2024年3月期第1四半期の決算説明会資料、同年6月末現在)と公表。
SBI証券の口座数は、傘下のSBIネオモバイル証券、SBIネオトレード証券(旧ライブスター証券)、投資運用業者フォリオの口座数も含んだ数字だ。
同社は2019年4月末以降、「SBI証券のみの口座数」を非開示にしたため、単独開示情報ベースでは楽天証券が国内最多である。
主要ネット証券初のクレジットカードつみたて導入で楽天証券の口座数は飛躍的に伸びた。口座数の伸びは利益につながっているのか。
「今は『面』を取りに行っています」
できるだけ多くの人に楽天証券を使ってもらう、顧客拡大戦略。
新NISA(少額投資非課税制度)の準備の進捗(しんちょく)は?
「資産残高の画面には現行NISAと新NISAが両方表示されることになります。それぞれのデータを管理し、一目でわかるようにしないと。現場は大変です」
楽天証券は、投資信託(以下、投信)のつみたて一つとっても、楽天カードつみたて、楽天キャッシュつみたてなど入金ルートが何種類もある。
「新NISA口座での投資スタートは1月ですが、カード引き落としの場合、年内にセットしておかなければなりません。
証券業界は10月から大変な状況の中を一斉に走ります。
楽天証券はつみたてNISAや一般NISA口座があれば新NISA口座が自動で開設されるようなシステムを組みます」
顧客は手間なしで新NISAへ移行できるわけだが、システム投資の負担は重そう。
楽天証券のNISA口座で「低コストの投信だけ」をつみたてる投資家ばかりになると、証券会社側の利益という点では話にならないのでは?
仮に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を月3万円買うだけの顧客なら、1人当たりのコスト回収に十数年かかる。