ラジオとリスナーの距離はもともと近かったけれど、濃いお客さんの層を広げ、厚くしたのは、ラジコの登場が大きいと思います。受信機がなくてもパソコンやスマホで聴ける、タイムフリー機能でリアルタイムでなくても聴ける環境を作った。それだけでなく、エリアフリーの有料会員システムは新しい収益化の道を作ったと思います。

 ラジオが持つコミュニティーの深さで僕が忘れられないのは、放送作家として駆け出しの頃、槇原敬之さんの「オールナイトニッポン」にサブ作家として参加していたときのことです。最新アルバムの発売に合わせ、先輩の作家が番組イベントとして往復ハガキをつけた風船を飛ばしたんです。そのハガキを受け取ったら番組に送ってくださいって。僕、めちゃくちゃバカにしたんです。真夜中に飛ばして受け取るわけないじゃんって。ところが翌週、2通くらい送られてきた。僕はすごい恥じました。0.01%の可能性に賭けるのが、ラジオの企画だろうと。「そんなことあるんだ」っていうことに共感したくて聴いているのがラジオだし、ラジオって素敵だなと思ったんです。

 ラジオのよさは、自分の居場所を感じる番組が必ず見つかることです。リアルタイム視聴派の僕がよく聴くのは、リリー・フランキーさんがパーソナリティーの「スナック ラジオ」や「ももいろクローバーZのSUZUKIハッピー・クローバー!TOP10」。ももクロの番組を聴きながら「ああ、日曜日が終わっちゃう」みたいな気持ちになったりして。ラジオで曜日を感じることも、生活のなかですごく大切だなって思うんですよね。

(取材/構成・角田奈穂子)

AERA 2023年10月2日号より抜粋

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