「過料」を科すよう求める通知が出され、教団は記者会見を開いた。解散命令請求は「自民党が支持率回復を狙っているだけ」と指摘する声もある

「旧統一教会」の問題が、新たな局面を迎える。政府は10月中旬にも旧統一教会への解散命令請求を行う見通しだ。元信者と弁護士の心境とは。AERA 2023年10月2日号より。

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 昨年7月8日、奈良市で安倍晋三元首相(当時67)が銃撃されてから1年3カ月。政府が10月中旬にも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求を行う見通しとなった。

「長かったです。ようやく、ここまでたどり着いたか、という想いです」

 と話すのは、元信者の60代の女性だ。約40年前の1984年に入信し、信者が共同生活する「ホーム」で暮らしながら、新たな信者の獲得や献金集めに奔走したという。ちょうど霊感商法が社会問題化した時期。女性の周囲では、勧誘中や献金をめぐるトラブルで警察に通報されるような事態が頻繁に起きていたが、教団幹部から「教団名は一切出すな」と指導されていたという。持たされていた当時の名刺には教団名はもちろんなく、肩書は「委託販売員」。女性は、

「あくまで個人でやっていることだと教えこまれていた。組織の悪質性が隠されてきた結果、多くの被害者を出し、2世問題まで起きてしまった」

 と唇をかむ。

「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)事務局の阿部克臣弁護士も、

「本来であれば、何十年も前に解散請求されるべき法人です。にもかかわらず、いくつもの問題と捜査の機会を巧みに潜り抜け、今日まで存続してきた」

AERA 2023年10月2日号より

 と指摘。特に2009年2月、警視庁公安部が教団信者が社長を務めていた都内の有限会社「新世」に家宅捜索に入った事件を「逃してはいけないタイミングだった」(阿部弁護士)と振り返る。

 同事件では「悪なる先祖が作用する」などと不安をあおって印鑑を売りつけたなどとして新世の社長ら計7人が特定商取引法違反容疑で逮捕されたものの、教団本部の関与は「証拠は見つからなかった」として摘発が見送られている。

「あの時、捜査のメスをきちんと本部に入れて、刑事事件の責任を負わせるべきだった。防ぐことができた被害は大きい」(阿部弁護士)

(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年10月2日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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