2004年の初演以来、演じ継がれてきたミュージカル「DREAM BOYS」が、新たに渡辺翔太を主演に迎え、9日、帝国劇場で幕を開けた。かつて何度もこのステージに出演し、先輩の背中越しに景色を見つめながら、フライングでは「ワイヤーをつける係だけをやってきた」と振り返る渡辺が、自ら客席上空を舞い、ミュージカルの聖地で0番、センターに立った。AERA 2023年9月25日号より。
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「いまさら母親みたいな顔されたってさ、遅いんだよ!」
無視されて育ち、捨てられた少年のひりひりとするような叫び。ショウタの表情から伝わる、痛みと悲しみが綯い交ぜになった感情が、場を支配する。
新キャストを迎えて開幕した「DREAM BOYS」は、いい意味で、渡辺翔太を感じさせない舞台だった。そこにいたのは、人を守るための秘密を抱え、罪を引き受けるショウタだ。何より圧巻なのはその表情。今期の出演ドラマ「ウソ婚」では「言葉じゃなくて表情で伝わる」よう「監督にご指導いただきながら」演じたと語っていたが、その演技をも凌駕する。次々と顔に現れる、普段は見ることがないような表情に揺さぶられ、物語に強い力で引き込まれていく。
歌が持つ表情もまた豊かだ。定評のある渡辺の稀有な声の良さは、セリフでも歌でも遺憾なく発揮され、音楽と言葉に強い感情が乗ることで切々と心に訴えかけてくる。「深い闇を一人彷徨う、微かな光を探して」──「切なく儚く見える」バラードを、と自らリクエストしたという新曲「光」には、渡辺自身の思いも重なるかのようだ。
もちろん、近年鍛えてきた肉体でも魅せた。グローブをかまえる姿が板についたボクシングシーンで披露される筋肉に説得力があるのはもちろんのこと、演出を担った堂本光一の直伝という美しいフライングや、腕の力だけで6メートルのロープを登りきるといった数々のアクションシーンでも、目を奪いにくる。2時間あまりが瞬く間に過ぎ去り、もう一度観たい、と素直に思わせる公演だった。