
大学や高校卒業後、社会に出て大きく環境が変わった人にとっては、そろそろ昔の仲間が懐かしく思うころかもしれない。そこで、同窓会が頭をよぎるかもしれないが、実は梅雨は同窓会に適した時期なのだ。
なぜ、梅雨の時期がいいかというと、梅雨時は出掛ける予定を立てる人も少なく、案外、同窓会の出席率が高いという。一方、盆暮れ正月やゴールデンウイークあたりは家族との予定を優先させるので、身動きが取れないという人も多い。事実、その時期に同窓会を開催してもあまり出席率がよくないそうだ。
しかし、同窓会を開くというのはなかなか大変だ。数人で集まるというならばともかく、クラス全体、学年全体と規模が大きくなると、非常に難易度が高くなる。
まず、FacebookやLINE、TwitterといったSNSだけでは連絡が付かないメンバーが必ず存在する。そして、スケジュール調整や会場の確保、会計、出欠の管理といった面倒なことがめじろ押しだ。会場ひとつ取っても、学年全体であれば居酒屋でというわけにはいかない。遠方からの出席者が多い場合、宿泊も含めて考えなければならず、さらに手間が増えてしまう。そこで、ニーズが出てくるのが「同窓会のプロ」だ。
まず、旅行代理店のJTBが運営する「JTB同窓会コンシェルジュ」がある。会場の手配はもちろん、名簿の管理、案内状の作成・発送、出欠の管理から、受付・司会進行など当日の運営まですべて請けおってくれる。しかも、1名7000円からと、非常にリーズナブルな料金のプランも用意されている(当日の運営は自分たちで行う)。
ほかにも、同窓会運営代行を専門とする「笑屋」「同窓会ネット」「同窓会本舗」などが、同様のサービスを展開している。料金面では、例えば「笑屋」であれば、とある高校の学年全体の同窓会で、1次会と2次会をあわせて1人当たりの会費は1万1000円だったという。
こうした企業は「同窓会の運営代行」が本業のようだが、本業にできるほど同窓会の開催が増えている背景には、SNSでなつかしい名前を見る機会が増え、「名前だけじゃなく、どうせなら顔も見たい」という要望が増えてきていることが考えられる。
「ゆびとま」はなつかしい仲間を見付けることができるサービスだったが、これらの同窓会ビジネスは「見付けたなつかしい仲間と会えるサービス」ということになる。20代の若者はもちろん、家庭が少し落ちついて時間が取りやすくなった40代、そして50代以上の利用も多いのだという。
そんななか、最近の同窓会には、なんと“スポンサー”が付くことがあるというから驚きだ。同窓会に集まるメンバーは、同じ高校や大学の卒業生になるので、学力レベルや出身地、居住地が似かよってくる。そこに目を付けて、英会話学校やタクシー会社などがスポンサーになるケースがある。あの楽天も電子書籍「kobo」のアピールのために同窓会をスポンサードすることがあるという。結果、同窓会の会費が安くなるのだ。
「そんなに便利なら、ぜひやろう!」と思う人も多いだろうが、思っている以上に準備期間がかかることを覚えておいてほしい。最低でも2~3カ月は必要になる。だが、幹事代行を頼まない場合でも、大規模な同窓会になると数カ月の準備期間は必要になるのだ。
料金がやや割高に感じたとしても、40~50代であれば、ある程度財布に余裕が出てくるので、「手間賃」と考えれば同窓会をプロに任せようと考えるはずだ。そうなると、いまのところ同窓会運営代行に頼むことに大きなデメリットは見当たらないと言えるだろう。
だが、同窓会にはもっと大きなデメリットが隠されている。そう、「美しい思い出は、美しいままにしておいた方がいい」ことが多いのだ。憧れの人の“今の姿”を見るべきかどうか、その判断は諸兄に委ねたい。
(ライター・里田実彦)