「安倍総理そして菅官房長官にお願いをして、この洋上風力の法律を作るために国交省に政務官として行かせていただいた」

「運転開始時期というのは、私は非常に大きなファクターだというふうに思います」

「運転開始時期というのは表にオープンにするべきだと思っています」

「運転開始時期に対するウエートづけをもうちょっと見直すべきだろうと思っています」

 洋上風力発電での入札では、参入しようとする企業が運転開始時期を公表し、早期に稼働する計画に評価の重点を置くべきだという主張を交えた質問だった。これは、運転開始時期について比較的早い計画を予定していた日本風力開発の利益に沿っていた。

 この質問の答弁に立った当時の萩生田光一経産相は、

「選定の基準や開示情報の在り方も含め、外部有識者の知見もいただきながら検討する」

 と約束。同年10月27日に事業計画のスピードも重視する新しい評価に改定された。

 その翌日、塚脇前社長は社員に現金1000万円を議員会館の秋本容疑者に届けさせた。

 まさに評価の基準見直しの「謝礼」だと特捜部は動いたのだ。

趣味の「競馬」が事件の舞台

 秋本容疑者は塚脇前社長と共通の趣味である「競馬」を贈収賄の舞台にした。

 発表などによると、秋本容疑者は2019年に日本中央競馬会(JRA)の個人馬主に登録した。審査には一定の資産が必要だが、秋本容疑者は塚脇前社長に3000万円を借りてクリアした。2021年秋には、秋本容疑者と塚脇前社長は馬主組合「パープルパッチレーシング」を共同で設立。塚脇前社長は組合の経費や馬の購入費などの形で、秋本容疑者に賄賂を提供したとみられている。

 私も以前、競馬の取材をしていたことがあったため、秋本容疑者と競馬の話になることもあった。秋本容疑者は競馬にものすごく詳しかった。

「来週のレースに出走する、Aという馬は血統がいい。短距離の芝にあいそうなので楽しみだ」

 などと言いながら、競走馬の血統を解説しはじめたのには驚いた。

 秋本容疑者の知人は、こう振り返る。

「コロナ禍前だったから、4、5年前になるが、秋本容疑者から『中山競馬場へ見に行かないか』と言われて行きました。彼が馬主だと聞いたのはその時で、トッカンと言われる特別席、VIPルームに案内されました。国会議員となれば待遇が違うんだなと思いました。秋本容疑者は競馬に詳しくて、『次のレースは逃げ馬が引っ張り早いペースの展開、差してくるこの馬が狙いだ』とか教えてくれた。実際、その馬が2着にきて『競馬の解説もやろうかな』と笑いをとっていた」

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