秋本真利容疑者
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 東京地検特捜部は7日、衆院議員の秋本真利容疑者(48)=自民党離党=を受託収賄の疑いで逮捕した。自民党内で脱原発を掲げる「異端」ともいえる政治家だけに、「狙われたのでは」という声も聞こえる。

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 秋本容疑者は、「日本風力開発」(東京)が洋上風力発電事業に参入するために国会で同社に有利な質問を繰り返した見返りとして、総額約6000万円の賄賂を受け取った疑いがある。洋上風力発電は、福島第一原発の事故後、再生可能エネルギーとして大きな注目を浴び、国も後押しして広がっていたが、現職の国会議員への贈収賄事件へと発展した。贈賄容疑がある日本風力開発の塚脇正幸前社長(64)は在宅で捜査が進む。

 秋本容疑者は、千葉県出身で当選4回。初当選は2012年12月、旧民主党から自民党が政権を奪還した衆院選だった。

自民党重鎮は「野党の人間か」

 長きにわたって原発推進をしてきた自民党内にあって、1年生議員のときから、

「日本は脱原発すべきだ」

 と明確に語っていた。

 当時は東京電力福島第一原発の事故の混乱がまだ続いている時期だったとはいえ、党内で公に脱原発を主張していたのは河野太郎衆院議員(現デジタル相)ら限られた議員だった。それだけに、否が応でも目立った。

 私は何度か秋本容疑者に取材する機会があったが、

「福島第一原発の事故で放射能に汚染されたのは、福島県だけではない。私の地元、千葉県でも同様です。放射能に汚染されたごみや土をどう処理するか非常に大事な問題だが、なかなか進まない」

「原発被害者の支援チームが内閣府にありますが、経済産業省の人間が中心で東京電力の味方になっている。本当に許せない。経産省は、原発推進省のようなもので、とんでもないところだ」

「福島の事故で東京電力や、そこにカネを貸した金融機関、株主そして経営陣に対する責任すらあいまい。このまま原発再稼働させてまた事故を起こした場合でも国が補償しますという新たな法律を策定しようとしている。とんでもない」

 などと、政権批判にもつながりかねない主張を声高に訴えていた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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