取材場所は議員会館などで、近くに別の議員や経産省の幹部がいた。原発推進の自民党の重鎮が顔をしかめて、

「彼は何を言っているんだ。野党の人間か」

 と小声でつぶやくこともあった。それでも秋本容疑者はお構いなしだった。

 私が、

「脱原発はその通りだが、自民党の偉い人がいるところで、あそこまで言っても大丈夫か」

 と声をかけると、秋本容疑者は、

「脱原発こそ正論でしょう。ひるんではいけない。河野さん一人で戦わせてはいけない」

 と意気軒高だった。自民党にもこんな議員がいるのだと驚いた。

秋本容疑者は太陽光発電、風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギーにも詳しかった。

2017年、当時の安倍政権で国土交通政務官に就任。同時期に「自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の事務局長にも就任した。

 秋本容疑者は出身が法政大学で、菅義偉元首相の後輩にあたる。菅氏が主宰する党内グループ「ガネーシャの会」のメンバーでもあった。

 政務官就任時に話をした際、

「菅さんのおかげで選んでもらったのかと思う。さすがに菅さんでも、原発に直結する経産省や環境省の政務官はやらせてくれなかったな」

 と苦笑しながら、

「脱原発、再生可能エネルギー推進でも国交省でやれることはたくさんある。議連の事務局長にもなったので、思う存分やりたい」

 と嬉しそうにしていた。

贈賄企業の「利益」に沿う質問

 国交政務官として、秋本容疑者は、国が推し進める洋上風力発電推進に向けた「再エネ海域利用法」の法整備にかかわった。

 同法は、国が洋上風力発電の区域を決めて民間参入を公募してゆくもの。その参入を目指したのが、塚脇前社長の日本風力開発だったが、2021年に秋田県や千葉県の海域での事業入札に応じたものの、価格差で参入できなかった。

 秋本容疑者は国交政務官を退任後、国会でこの洋上風力発電入札での評価の仕方について質問していた。2022年2月17日の衆議院予算委員会で、洋上風力発電に参入する企業の「運転開始時期」について、質問を繰り返した。

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