スーパーでも顔を覚えられようと、その日食べるものだけ買い毎日通うという涙ぐましい作戦(写真:本人提供)

 いやはやウソみたいである。外国に行ったら語学ができなきゃどうにもなんないとずっと思っていて、それが我が最大のコンプレックスだった。でもそんなこと全然なかったのだ。言葉はできずとも、態度で自分の気持ちを伝えることができる。そして好きな場所は「何度も行く」ってことが、単純だが間違いなく相手へのリスペクトを伝える態度なのだった。そしてリスペクトが伝わればこちらもリスペクトしてもらえる。注文の時に精一杯の笑顔とサンキューを繰り返すのみというバカっぽい態度しか取れずとも、それで十分大丈夫なんである。

 そう改めて考えると、人と繋がるために一番肝心なことは、まずは相手をよく見て好きになることですね。親切だったり、笑顔が良かったり、働き者だったり、真面目で一生懸命だったり……そんな様子を「いいな」と思うことができたなら、それは必ず自分の態度に現れて、相手にちゃんと伝わるのである。

 逆に言えば、それがなかったら人と繋がることなんてできっこないですよね。異国であろうが日本であろうが。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2023年9月11日号

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