警察官の呼びかけを受けて、ブタのぬいぐるみを持った奉迎者はあきらめてカバンに入れたようだった。
その場にいた奉迎者は、ため息をつく。
「バッグを空けて、中身を確認されましたが、今までにこんなことはなかった。東京駅のロータリーで待つ奉迎者には検査はなかったようですが」
8月には「カバ」の人形が
現場に「厳戒」態勢が敷かれたのには、理由があった。8月21日、天皇ご一家が那須御用邸に滞在するため、JR那須塩原駅に到着した際のハプニングだ。
天皇陛下と雅子さま、そして愛子さまは、駅に集まった人たちのそばに歩み寄り、「夏休みですか?」「勉強は?」などと声をかけていた。
そのなかに、自身で撮影した写真で作ったカレンダーを、雅子さまに手渡す人がいた。
雅子さまは丁寧に受け取ってページをめくり、天皇陛下もカレンダーをのぞき込むしぐさをみせて、相手への感謝を示した。雅子さまは車に乗って出発するまで、しっかりと手に持っていた。
誰かのプレゼントを受け取ってもらえたなら、私の物も――となるのが人情だ。
しかし、天皇や皇族が公衆の場で贈り物を受け取ることが常態化すれば、爆発物や毒物などを紛れ込ませるなど、テロに利用される危険が出てくる。また、自分の著書や作品、自社製品などを渡した人が「皇室に献上した」と宣伝に利用する恐れもある。