もちろん、お金を奪われた男性からしたら「冗談じゃねぇよ」という話かもしれない。それでも詐欺や詐欺幇助で若い女性が逮捕されることの後味の悪さは、「パパ活」そのものが、対等な男女関係などではなく、男性が若い女性を都合良く搾取するための装置であることが抜け落ちているからだろう。なぜ、りりちゃんはパパ活をしなければいけなくなったのか。なぜ、「パパ活」なんて言葉がフツーに使われてしまっているのか。詐欺幇助にいたるまでのさまざまな理不尽を、彼女はどう乗りこえてきたのだろうか。
報道によればりりちゃんは、家庭に居場所がなく、10代を歌舞伎町で過ごす女の子だった。歌舞伎町にたむろする女の子たちの多くがそうであるように、ホストにはまり、ホストクラブでのお金を捻出するために性産業で働いていたという。そういう意味でりりちゃんは、若い女性を搾取する街に丸ごと飲まれてしまった子どもであり、生きのびる手段は自分がされてきたように誰かを搾取することでしかなかったのかもしれない。りりちゃんが言う「ケア」という言葉が、どこかちぐはぐで、どこか重たいのは、りりちゃんの人生で実感できた「ケア」が、もしかしたら歌舞伎町の喧噪の中、ホストがささやく薄っぺらい「ケアの言葉」で、それにすがってきた人生だったからかもしれない。
ちなみに、世の中には酷いマニュアルが山のようにある。このニュースを知った私の友人は、「書店で『初対面の女に中出しできる方法』というマニュアル本を見たことがある。こっちも逮捕しろ!」と怒っていた。そんなもの本当にあるの?と半信半疑でネットで探してみたところ、書籍は見つからなかったが「初対面の女に中出しできるマニュアル」といったものが本当にいくつかあり、「女をエッチな気持ちにさせコンドームがない場所に連れていく」ことがマニュアルとして記されていた。性暴力幇助ですよね。
倫理的でない女がより激しく厳しく罰せられる社会。一方、男は“倫理的でない女”を買うことで、貧しい女に金を与え、人助けをしたと自尊心を満足させることができるだろう。その行為を「頂き」と表現したりりちゃんの表現力は、きっといつか人から奪わない方法で生かせるはずだ。だから絶望しないで。なんだかそんなふうにりりちゃんに話しかけたい。