作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「頂き女子りりちゃん」について。
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釈然としない。「頂き女子りりちゃん」事件である。
男性の恋愛感情を利用し金銭をだまし取るマニュアルを書いて販売したとして、女性が逮捕された。詐欺幇助容疑、ということらしい。「頂き女子りりちゃん」という名でYouTube配信などをしていた25歳の女性だ。
マニュアルを買った女性からは「マニュアル通りにやったら1000万円取れました」と報告されていたらしいので、少なくともマニュアルに詐欺はないよね……と、ついついりりちゃんの肩を持ちたくなるくらいに、懲罰的意味合いがあまりに濃い逮捕という印象を受ける。
もちろん警察が逮捕せざるを得ないほどに、あまりに堂々と「おぢ」(オジサンのことを、年齢問わずに「おぢ」とりりちゃんは呼びます)からお金を「頂く」方法を、顔出しでネット配信していたのだとは思うが……やっぱりどこかモヤモヤするのは、この事件が「パパ活」の現場で起きているからだろう。そもそも「パパ活」の現場で嘘はどのくらい許されるのか、許されないのか、という超難題を突きつけられているような気分になるのだ。
だって、パパ活を一言で言えば「男が若い女を買う行為」ですよね。「パパ活」と名付けることで、金が必要な若い女性と、若い女と交際したい男の欲望がマッチするウィンウィンの関係のようにうっかり聞こえがちだが、基本は性搾取でしかない。そういう場で「本当のこと」はどれだけ語られるのだろうか。本名を言うだろうか。お金が必要な理由を言うだろうか。男は既婚者であることを言うのか。職業を言うのか。さまざまな嘘が前提の上で、女たちは自分が費やした時間を最大限に換金しようとし、男たちは出費を最小限に抑えながら女との時間を求め自尊心を満たすのがパパ活ではないだろうか。
そういうパパ活の現場で、りりちゃんがネット上で注目を浴びるほど「成功」したのは、りりちゃんが男たちの幻想を崩さない努力をしていたからでもある。それがりりちゃんが残してきたネット配信やマニュアルからは伝わってくる。