NBAのフェニックス・サンズに所属する渡辺雄太。長く日本代表を牽引してきただけに、大会にかける思いはひとしおだ
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 手負いのエースのたぎる思いと、若きニューヒーローの誕生と。自国開催となったW杯で、選手たちは何をコートに刻んだのか。AERA2023年9月11日号より。

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 熱い思いが、とめどなく溢(あふ)れた。

 オーストラリアに89対109と敗れ、1次ラウンド1勝2敗。2次ラウンド進出を果たせなかった日本のエース渡辺雄太は、試合後のインタビューでかれ切った声を絞り出した。

「後半2点抜いてうち勝ってるんで、これがうちのバスケットですし、最後までどんな展開になっても諦めないっていうのがうちのバスケットなんで」

 2度繰り返した「うちのバスケット」に、チームに対する矜持が滲(にじ)んだ。

 直前の強化試合で右足首を捻挫。完敗だったドイツ戦で、チーム最多20得点とひとり気を吐いた。次のフィンランド戦は相手エースへの強固なマークを遂行した影響もあって4得点。国際大会17年ぶり勝利に沸いた会場を、足を引きずって後にした。オーストラリア戦は出場が危ぶまれるほどの手負いの状態ながら24得点、7リバウンド。3ポイントシュートを5本中3本リングに沈めた。プレータイムは36分53秒と、両チームで最も長くコートに立った。

代表に対するプライド

「次の試合、絶対勝ちます。ここからが本当の勝負だと思っています」

 いつもは温和で柔らかい笑みをたたえる男が、目を吊り上げ感情をむき出しにした。

 渡辺の言う「本当の勝負」とは、この後行われた17位以下の順位を決める2試合を指す。アジア6カ国の中で最上位の成績を残せば、パリ五輪出場権を獲得できる(執筆時点で結果は出ていなかったが、その後日本代表は2連勝し、48年ぶりの自力での五輪出場を勝ちとった)。それがなされなかったとしても、来年7月までに行われる五輪最終予選というチャンスが残されてはいるものの、24チーム中、上位4位までと枠が小さいうえ強豪揃いの欧州勢と競わねばならない。今大会でアジア1位になる以上に厳しい戦いが予想される。だからこそ渡辺は「絶対勝つ」と言ったのだろう。

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