近江鉄道/その走行音から「ガチャコン」の愛称で親しまれる。滋賀県では、近江鉄道に限らず、鉄道やバスなどの公共交通を守ろうと「交通税」の導入を検討し、議論を始めている(写真:近江鉄道提供)

 地方鉄道の経営の厳しさが増している。鉄路廃止の議論も各地で進んでいる。地方鉄道を立て直すには何が必要なのか。AERA 2023年9月4日号より。

【図表】主な私鉄の売上高、輸送人数、純利益はこちら

*  *  *

【地方】東:ひたちなか海浜鉄道×西:近江鉄道

 中小私鉄と第三セクターを合わせた地域鉄道は全国に95社あるが、この20年で輸送人員は約6割まで減少した。稼ぐ力が細る中、鉄路廃止の議論が各地で進む。

 だが、公共交通に詳しい関西大学の宇都宮浄人(きよひと)教授(交通経済学)は、「鉄道は極めて公益性の高いインフラだ」と語る。

「いつでも誰でも乗れる安心感があり、街の賑わいの創出や街のシンボルにもなります。さらに、高齢になった時、自分の子どもが通学に使うようになった時にも使えます。こうした選択肢がある状態を『オプション価値』と言い、鉄道の場合は特に強い」

 地方鉄道をどう立て直すか。

 運営見直しの一つに「上下分離方式」がある。線路などインフラを「下」、運行を「上」に例え、インフラは自治体が引き受け、その上の運行部分は鉄道会社が行う。インフラの維持管理がなくなる分、鉄道会社の経営負担が軽くなる。鉄道を共有財産と考える欧州では一般的だ。

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
次のページ