ベアトリックス女王(左)とアレキサンダー皇太子(右)ご一家の案内で王室馬車庫を見学する皇太子(当時)ご一家=2006年8月、オランダ、代表撮影

 翻訳作業は任せていても、上皇さま自身の語学力は相当に高いものだった。英語はもちろん、昭和の時代に上皇ご夫妻は東大教授の故・前田陽一氏のもとで仏語も磨いていた。

 多賀さんが、外国の賓客の通訳を務めたことがあった。多賀さんが日本語に訳し終えると、上皇さまはご自身で英語を聞き取っている様子だった。そこで、詳細な通訳は必要ないだろうと判断して次は簡単に訳したところ、上皇さまから、

「(日本語訳が)簡単すぎる。きちんと訳してください」

  と「クレーム」がついたという。

「やはり、ほぼ完璧に聞き取っておられるのだと確信しました」

 多賀さんは、上皇さまとの思い出を懐かしむように笑った。
 

教育パパ、ママだった上皇ご夫妻

 ほかの皇室メンバーも、英語に堪能な方ばかりだ。

「格調が高い英国英語であるQueen's English(クイーンズイングリッシュ)をお使いになる方」と多賀さんが話すのが、上皇后美智子さまだ。

 美智子さまが皇太子妃時代から、詩や和歌の英訳や、英語での朗読を続けていたのは有名な話だ。美しい日本語で知られる詩人、まど・みちおの作品の英訳も評価が高い。

 接遇の場面などでは、海外の詩の一節などを原文で、ごく当たり前のように口にされることもあったと多賀さんは話す。
 

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