石川さんは、藤さんと会うチャンスはいくらでもあったのに、そのときが最後となってしまった。

「晩年、ニューヨークのケネディ国際空港にて約49万ドル(当時のレートで約4900万円)もの多額の現金を持ち歩いていて没収される騒動を起こし、のちに事件性はないと返却されたけど、娘が売れて大金は手に入ったとは思います。娘の稼いだ金を持ち歩いていたみたいな印象もあるのかもしれないけれども、僕は藤さんは自分よりも娘、何より娘の才能を売り出したいというのはあったと思う。あのときの藤さんの『かけて! かけて!』は忘れられません」

 そう話す石川さんは、宇多田ヒカルの歌声を聞くと藤さんがよぎるという。

「母親・藤圭子さんの歌のうまさというか表現力など全てが、娘・宇多田ヒカルのからだにしみついていますからね。亡くなってから10年たっても思い出す『かけて! かけて!』という藤さんのよりどころは宇多田ヒカルだった。また、宇多田ヒカルも歌手・藤圭子を尊敬していたしね」

 藤さんは、天国からいまでもきっと宇多田ヒカルが光り輝くのを見守り、猛烈に推していることだろう。

(AERAdot.編集部・太田裕子)

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