【Q】レカネマブは、これまでのアルツハイマー病の薬と何が違うの?

【A】これまでアルツハイマー病に使われてきた薬(健康保険で認められている薬)は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4種類。いずれもレカネマブとは違ったメカニズムで症状の進行を遅らせる。

 ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンは、記憶と関連の深いアセチルコリンという神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑える「コリンエステラーゼ阻害薬」。アルツハイマー病の患者ではアセチルコリンの減少がみられるため、これらの薬を使ってアセチルコリンの減少を防ぐ。

 また、アルツハイマー病では脳内のグルタミン酸が必要以上に増える。メマンチンはこのグルタミン酸を抑える「NMDA受容体活性阻害剤」だ。

 一方、レカネマブのようなアミロイドβをターゲットにした治療薬は、神経細胞が死滅する主たる原因であるアミロイドの蓄積を防ぐという、アルツハイマー病の進行過程のより早期に働く薬だ。

 東京・日本橋で認知症治療をしているシニアメンタルクリニック日本橋人形町の院長、井関栄三さんは、「新しい治療薬としてのアミロイド免疫療法への期待は大きいものがあります。今後、上述の課題が解決され、対象となる患者が希望すれば誰でも受けられる治療となるのはまだ先のことになりますが、レカネマブがその第一歩となるものと考えられます」と話す。

(フリーライター・佐藤えり香)

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