町田香(まちだ・かおる)/1954年生まれ。県下の公立校で教職として勤める。守谷小学校および守谷中学校の校長を経て、2018年から現職(撮影/天田充佳)

 教員の多忙化問題に多くの自治体が苦心する中、茨城県守谷市では独自の学校教育改革プランを打ち出した。守谷型カリキュラム・マネジメントの「週3日5時間授業」だ。守谷市は2019年度から、市内にある全ての公立の小・中学校で、月曜日から金曜日までの6時間授業から週3日の5時間授業へ移行した。革新的な取り組みはいかにして生まれたのか。町田香・守谷市教育長が語った。AERA 2023年8月14-21日合併号の記事を紹介する。

【図表】一般的なカリキュラムと守谷型の違いはこちら

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 守谷市の教育改革のスローガンは「形を変えれば意識は変わる」だ。教育行政ではこれまで、社会環境や意識が変わらないとシステムは変えられない、と思われてきた。働き方改革でも学校現場の意識改革を説かれることが多いが、教員は子どもたちに対する思いが強いだけに簡単には変わらない。先に形を変え、意識を変えざるを得なくしよう、と考えた。

 また、首長や校長など、特定の人の手腕頼みでは、その人の異動や退職で改革がゼロに戻ってしまう。そのためにもシステムを変えることが重要だ。

 次に大事なのは具体性だ。理念だけではまず進まない。例えば、学校では4月に教育目標を立てる。最初は張り切って取り組むが、年度末にはほとんどの教員が覚えてもいない。学校現場はそういうことを繰り返してきた。教育委員会が方向性とスケジュールを提示し、「いつまでにこうしたい」という具体的な目標を設定する。その上で意見を求めれば、それぞれの立場で何ができるかを考えやすくなる。

 守谷型カリキュラム・マネジメント「週3日の5時間授業」には現場からの反対はほとんどなかった。準備段階から情報を共有したことも大きい。設計時には、校長会や教頭会、保護者会、教育研究会に声がけし、議論を重ねた。世間ではよく「ボトムアップがいい」というが、現場の声を聴くだけでは方向性が定まらない。基本ビジョンを校長や教頭、教務主任を通して現場と共有し、声を反映していった。

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