それなのになぜ岸田政権の方が支持されないのか。それは安倍政権の負の遺産があるからです。今回、円安になったころでその姿が顕になりました。本来であれば、円安の場合は輸出産業を中心に利益率は上がらなければならない。ところが、いろいろな企業の決算に目を通してみると、円安とインフレの影響で過去最高益という会社が多い一方で、利益率はマイナスになっている企業が結構多いのです。

 株式市場で企業の純利益は、営業利益や経常利益から税金を引いた後の利益であり、最終的に企業の利益として評価されるわけです。減税をしてくれると、最終的に経常利益が同じ水準であっても、純利益は増えるんですよね。

 だから、もうかったように見えるのです。ただ、それは見せかけの話であって、実態は何も変わらない。その実態を引き継いでしまったうえで、安倍政権のときにできなかった防衛費増大や子育て支援も打ち出したため支出が増え、状況は過酷の一途をたどっています。かつ円安で生活が苦しくなり、国民が持つフラストレーションが高まっているのです。

 とはいえ、支持率も下がっていて、目玉の政策もなくてマイナンバーで炎上している。非常にピンチな状況ですが、岸田首相を降ろせという声は自民党内からは出てきません。党内にいま、岸田首相を倒して代わりに首相になれる人はいないのが実態です。

 自民党最大派閥の安倍派の筆頭といえば、萩生田光一政調会長や西村康稔経済産業相が挙げられます。ただ、派内を完全にまとめられる状況ではなく、茂木敏充幹事長もキャラクターに癖のある方なので厳しい。次の首相を狙うのはこの人、という人が今はいらっしゃらないですよね。

 政治って不思議なもので、敵がいないと意外と長続きしすることもあるんですね。表面的にはピンチなんですけれども、短命で岸田政権が終わりなのかというと、必ずしもそうじゃないんじゃないかと思います。

(聞き手/AERA dot.編集部・板垣聡旨)

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