最も不足しているのは、弾薬です。米欧諸国の在庫は底をつき、米国はクラスター弾の提供に踏み切っています。一方、バイデン政権はウクライナが求めているATACМS等の射程の長い兵器の提供は「戦闘がエスカレートし、第3次世界大戦になる恐れがある」と渋ってきました。ウクライナのNATO加盟問題についても、慎重だと言われます。米国がロシアの反応を過度に恐れ、このような優柔不断な姿勢を取り続けることは、ロシアがウクライナや支援諸国を過小評価することにつながり、戦争を長期化させようとするロシア側の誘因を増大させています。ウクライナ侵攻における米国の責任を挙げるとすれば、この点に尽きると思います。
ゼレンスキー大統領は当初、侵攻された昨年2月24日の状態までロシア軍を押し返すことを目標としていましたが、今は1991年の独立時の国境線を取り戻すとしています。その実現可能性については議論が分かれますが、ウクライナの目的は明確です。対してロシアは、ウクライナを短期間で属国化できないと気づいて以降、戦争の終着点を見失っているのでしょう。ロシアの意図の見極めという困難な作業を我々はこれからも続けていくしかありません。
(構成/編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年8月14-21日合併号