人を見下したかのような笑いに抵抗するのは難しい。真剣に怒れば怒るほどに茶化しの対象となってしまう。まさに「ネタにマジレス」。さらなる笑いを誘うことにもなる。
そればかりか、いまや辺野古の抗議現場は、笑いを得るための「名所」となりつつある。
「ひろゆき氏に影響されたのか、茶化すためだけに辺野古に足を運ぶ人も見かけるようになった」
そう話すのは、座り込みに参加している50代の男性だった。
「観光で沖縄を訪ねた人だと思います。座り込みを示す看板の前に立ってVサインで記念撮影するだけなんですけどね。なにか馬鹿にされているような気がして嫌な気持ちになります」
座り込みに参加している人々に共通するのは、これ以上沖縄に基地をつくらないでほしいという思いだ。その思いを、基地を押し付けている側の「本土」の人間が、どうして笑うことができるのか。座り込みが示す問いかけに応じることもなく、人々の怒りを「ネタ」として消費するだけの人間は、自らの加害性にとことん無自覚だ。
半笑いで座り込みを蔑んだひろゆき氏に続けとばかり、こうした物見遊山で辺野古を訪ねる者たちが後を絶たない。
なかには著名人もいる。
美容外科を全国で展開する高須クリニックの高須克弥院長もそのひとりだ。
同年12月12日、辺野古を訪ねた高須院長は、抗議行動の継続を示す件の看板の前で笑顔を浮かべ、〈誰もいないので座りこみしてあげたぜ〉などと記したツイートを投稿した。ひろゆき氏同様、工事のない夕方に足を運び、すでに抗議行動を終えて人々が去った後を狙って写真撮影したのだろう。
基地問題へのスタンスはこの際どうでもいい。問題は人の心を冷え冷えとさせる、その笑いのなかにある。高須院長もまた「抵抗」を嘲笑した。
工事に抵抗するからこその抗議行動である。繰り返すが、工事が休んでいるときに座り込みする必要などない。
高須クリニックのホームページでは、特定のクリニックが年末年始などの一部を除いて「無休」であることを説明しているが、深夜に訪ねても受診はしてもらえないだろう。それと同じことだ。