斉藤章佳さん
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 子どもとかかわる仕事に就く際に、性犯罪歴がないことの証明を求める仕組み「日本版DBS」について、政府が学校や保育所、幼稚園で働くすべての人を対象に含める方向で検討していることが報じられた。ただ、学習塾やスポーツクラブは対象外となる見込みといい、専門家はDBSの導入は評価しつつも、「塾講師やインストラクターらによる加害行為は少なくない。可能な限り対象を広げるべきだ」と強く疑問を投げかける。

【図】子どもを守るために大人ができることはこちら

 日本版DBSは、イギリスのDBS(ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス)と呼ばれる、政府系機関が犯罪歴をデータベース上で管理し、さまざまな職業に就く際に必要な書類を発行する仕組みを参考にしている。

 2020年にベビーシッターのマッチングアプリ「キッズライン」を使用した、シッターの男2人による幼児へのわいせつ事件が表面化したことを契機に、日本版DBS導入を求める声が強まった。

 一方で、憲法が定める「職業選択の自由」や「プライバシー権」ともかかわるため、規制の対象などについて、どのような制度設計にするかが論点とされてきた。

 子どもへの性加害者の大半は“変人”には見えない

「DBSの導入は評価しますが、塾やスポーツジムで働く人、夏休みの体験イベントのボランティアらによる加害行為は少なくありません。可能な限り対象は広げるべきです」

 そう強く疑問を投げかけるのは、大船榎本クリニック精神保健副部長の斉藤章佳さん(精神保健福祉士・社会福祉士)だ。『小児性愛という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)の著書があり、2500人を超える性犯罪加害者の治療プログラムに携わってきた。

 斉藤さんは、「子どもへの性加害者の実態や、性加害者がどんな世界を見ているのかを反映した制度設計になっていないのではないか」と指摘する。

 斉藤さんによると、子どもへの性加害者の大半は、見るからにあやしい、いわゆる“変人”ではない。人当たりがマイルドで好感度が高く、子どもから人気で、親からも信頼されていたケースが大半だ。子どもの扱いにたけており、外見でおかしさを見抜くことは不可能だという。さらに、子どもへの性犯罪で、逮捕歴が2回以上の加害者の再犯率は、非常に高いことが特徴だという。

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法律や制度の『抜け穴』を巧妙に探す、ある意味で天才的な感覚や臭覚を持っている