平日は家と会社の往復。休日はやることもなく惰眠をむさぼるだけ。自分のことだと思った人も少なくないのではないだろうか。そんな何もない日々を「つまらない人生」だと思う必要はないと、心理学者の榎本博明氏はいう。新著『60歳からめきめき元気になる人 「退職不安」を吹き飛ばす秘訣』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、解説する。
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趣味のない人間になったのは、頑張ってきた証拠
昔からやりたいことなんかなかったし、今とくにやりたいことも思いつかないという人もいるだろう。
そこで気持ちが萎縮し、自己嫌悪に陥る人もいる。「なんてつまらない人間なんだ。なんてつまらない人生なんだ」と。自分が無趣味な人間だと気づいて、何だか虚しくなったという人もいる。
人から「趣味は何ですか?」と尋ねられ、言葉に詰まってしまい、これはまずいと思い、趣味を探し始めたという人もいるが、つまらない人間だと思われないように、偽の趣味を想定して答えるようにしているという人もいる。これを趣味偽装というそうだ。あまりに変わった趣味を偽装して、興味をもたれてしまうと、質問されても実際はやっていないので答えに窮してしまうが、ありふれた無難な趣味を想定すれば、それ以上突っ込まれるリスクもない。ほんとうは趣味はあるのだが、あまりに変わっているので人に言いたくないため、趣味偽装をしているという人もいるようだ。
いずれにしても、趣味がないからといって、「つまらない人生だ」などと全否定することはない。趣味がないのは仕事一途に頑張ってきた証拠とも言える。
ここでようやく仕事一途の生活から解放されたのだから、はじめのうちは戸惑いも大きいかもしれないが、焦らずゆっくりと、やりたいこと、お気に入りの過ごし方を模索していけばいい。
なかなか見つからず迷うのは、それだけ一生懸命に働いてきたからなのだということを念頭に置いて、ここでじっくり迷うことができるのは贅沢なご褒美なのだと思えばいい。