その仕事ちゃんと自分にコミットしてる?(イラスト:サヲリブラウン)
その仕事ちゃんと自分にコミットしてる?(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 この原稿を書いている日、東京の最高気温は37度でした。まだ梅雨も明けていないのに、どうにかなりそうな暑さ。しかし、エアコンが無事に直りまして私はご機嫌でございます。いやあ、本当に良かった。

 お医者様も害虫駆除業者も経営診断士も整体師もそうですが、問題のありかを見つけ解決する仕事ってかっこいい。観察オタクの解決フェチだけに極められる仕事です。

 よく、どんな仕事が自分に向いているのかわからない、なにがやりたいのかもわからないという相談を受けます。私は「音楽が好きだから」という漠然とした理由でレコード会社を志望し運よく採用されましたが、合格したのは一社だけだったので、あそこで落ちていたら同じ疑問にぶち当たっていたと思います。

 結果的に、レコード会社での仕事はおおむね楽しくやれました。しかし、音楽が好きだからだったとは思いません。ひとつの要因ではあるけれど、私は「ものを作って人に伝える」ことに喜びを見いだすタイプだったからと、しばらく働いてから気づきました。働く前は、仕事が面白くもつまらなくもなるということも知りませんでした。

 現在の若者たちがどんな就活指南を受けているのか存じませんが、フルタイムの仕事をする前から自分に合った職種で選ぶのはかなり難しいでしょう。就職経験がある大人にとってもそうなのですから。

 こだわりがわかれば話は早くなるものの、自分ではなかなかわからない。でも、必ず誰にでもひとつはある。「こだわらないようにする」も、こだわりのひとつですから。

 どんなときに楽しいか、幸せを感じるか、もしくはアドレナリンが噴出するような興奮を覚えるか。毎日の生活で、そのあたりを意識すると向いている仕事がわかるようになると思います。それだけで万事解決とはいかぬものの、だいたいの向かう方角が決まる。

イラスト:サヲリブラウン
イラスト:サヲリブラウン

 エアコンの修理をしてくれた作業員の方は、ベテランと新人の2名でした。若者は機敏に動き、ベテランの仕事を食い入るように観察していました。この人は、たぶんこの仕事に向いている。

 どんな仕事でも、ちゃんとコミットしないとやりがいも出ませんし、楽しくもなりません。しかし、どんなことならコミットしたくなるかは人それぞれ。それを職種ではなく、業務を経て得る結果から逆算してみると、新しい視野が開けてくると思います。

○じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中

AERA 2023年7月31日号