6月18日の試合で2者連続ホームランを打ったマイク・トラウトをベンチ前で迎える大谷。WBC決勝では投手と最終打者として名勝負を繰り広げた(スポニチ/アフロ)
6月18日の試合で2者連続ホームランを打ったマイク・トラウトをベンチ前で迎える大谷。WBC決勝では投手と最終打者として名勝負を繰り広げた(スポニチ/アフロ)
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 エンゼルスの大谷翔平選手の快進撃が止まらない。今シーズンも、前半戦で両リーグトップの32本塁打を記録するなど、異次元の活躍を見せる大谷選手。以前と比べてどう変わったのか。野球解説者・山崎武司さんが語る。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。

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 前半戦を終えて32本塁打。日本人選手初のメジャーリーグホームラン王が現実味を帯びてきました。タイトルを取れば、2021年にゴルフの松山英樹選手がマスターズを制した衝撃を超える、スポーツ界の超ビッグニュースだと思います。

 大谷選手はメジャー4年目の21年に46本塁打を放って打者として「覚醒」しました。なんといっても体が大きくなりましたよね。ふつう、ウェートトレーニングをして体を大きくすると、筋肉が硬くなって疲労がたまったときにケガをしてしまいます。それでメジャーリーグに挑んだ多くの日本人選手が失敗してきました。しかし、大谷選手は筋肉の柔軟さを維持したまま体を大きくすることに成功したように感じます。だから、見た目もいわゆる「ゴリゴリマッチョ」じゃないでしょ。打ち方も変わりました。メジャー移籍当初は前で当てただけのバッティングが目立っていましたが、今は振り切ったあと、後ろ側の軸足に体重が乗っています。打つ瞬間は前に体重がいって、打ったあと後ろに反り返るような。完全にホームランバッターの打ち方です。これで引っ張ることもできるようになり、広角にものすごい打球が飛んでいます。

 今年の6月は15本塁打と特に絶好調でした。これを支えたのは、内角をさばくうまさです。大谷選手は背が高くて腕も長いから、身体の構造上インコースの球を強く打つのは難しいんです。でも、内側いっぱいいっぱいの変化球を見事にライトスタンドに運んでいました。これをやられたら、ピッチャーは投げるところがないでしょうね。

 今シーズン、投手としてはストレートの精度がもう少しほしいなと思いますが、それでも十分な活躍です。メジャーは下位打線でも気を抜いたらスタンドまで持っていかれるパワーヒッターが並んでいます。その緊張感のなかで投げるのは疲れも半端ないはず。僕は野手だったのでピッチャーの疲労感はわからないけれど、同僚の投手を見ていると先発で投げた翌日は体がバキバキでめちゃくちゃきつそうでした。それなのに、先発の翌日もDHで4打席立って走って。もう考えられないですね。

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