この発表会見の数日前、西川きよしは芸能生活60周年にして初の自伝「小さなことからコツコツと」を出版、その発表会見では14箇所をめぐる全国ツアーの開催も発表した。どこまで精力的なのか。


 本書にはお笑い芸人としての歩み、やすし・きよし結成と大活躍、そして横山やすしが引き起こした騒動、参院選への出馬、そしてもちろん、愛する妻・ヘレンとの出会いや感謝など、お笑い芸人・西川きよしの60年が詰め込まれている。そして印税は、「目玉の恩返しをさせていただきたい」と、全額寄付する予定だという。

 ところでそんなきよしの話は、とにかく長い。そして時にそれていく。それが歓迎されないこともあるという自覚はあるようで、「世話焼きいうんですかね、必要以上に人にやさしくするのが、えらい迷惑になるんですよ」。


 文枝・きよし会見でも、「共演者に嫌がられるのは、ロケが長いということです」と、自虐で笑いをとる。やはり貪欲だ。

 文枝ときよしの2レジェンド、実は昨年よりコンビとして「コツコツブラザーズ」を名乗っており、今回の新番組会見でも結成まもないコンビということでM-1グランプリへの出場をほのめかし、銀シャリ橋本に、「誰も審査できないです!」とエントリーしないよう牽制されていた。

「まだまだ吉本、安泰です」
 という橋本の言葉は決してヨイショではない気がした。


 トップ二人が今なおこれほどまでに笑いに貪欲であるならば、そこに続くベテランも若手も手を抜くことはできない。コツコツブラザーズの漫才は、勢いのある若手と十分戦えるどころか、目の前に立ちはだかりる大きな壁にすらなるかもしれない。これほど贅沢なこと、なかなかないだろう。
 やっぱりM-1にエントリーしてもらい、周囲の出場者、そして審査員らがビビりちらかすさまを見てみたい。

(ライター・太田サトル)
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